テレビなどでいう「景気が良い」「景気が悪い」とかって、誰が何を持って判断しているのでしょう?
それは「GDPの動き」のことなのです。
GDPは「Gross Domestic Product」の略で、日本語だと「国内総生産」と言います。
GDPって良く聞きますよね。
景気の良し悪しは不動産市況に影響しますので、GDP値の動きをみてピンとくる程度の理解をしておきましょう。
GDPの増加は、国民所得の増加を意味する
「GDPが増えている」ということは「国民の所得が増えている」ということなのです。
「国民の所得が増えている」ということは「社会のお金が増えている」ということです。
すなわち「需要が旺盛だから、誰か(主に企業)が借金をして、設備などに投資している」ということですね。
(「何言ってるかわからない」という人は「お金ってどこから生まれるのか?」をご参照ください。)
GDPが増えているということは、
- 国民の所得が増えたので、国民の需要が増える。
- その需要に応えるように企業は借金をして設備投資して(=モノを買って)、その設備でモノを製造する。
- 需要があるばモノは売れるので、企業の雇用も増え、社員の所得が増える。
- 「1」に戻る。
という感じでお金が循環するんです。
GDPには3つの側面がある

ふ〜ん。何となく分かったけど、どうやって計算してるんだ?
GDPには、3つの側面があります。
- 生産面
- 支出面
- 分配面
「企業などが付加価値を創出し(生産面のGDP)、それに対して支払いが行われ(支出面のGDP)、誰かが支払ったお金は必ず誰かの所得になる(分配面のGDP)」ということです。
これらそれぞれ算出方法が違うのですが、最終的にはこれら全て同じ数字になります。
これを専門的には「三面等価の原則」と言います。
良くわからないと思いますので、例えば、パンを10,000個製造して、販売するまでの流れで考えてみましょう。

まずはパンの生産面 (生産①)。
- 農場は小麦を生産し、40円 x 10,000個を小麦粉工場へ売ります。
- 小麦粉工場は小麦粉を生産し、80円 x 10,000個個でパン工場に売ります。
- パン工場はパンを生産し、120円 x 10,000個で小売店に売ります。
- 小売店は売り場を提供し、160円 x 10,000個で消費者に販売する体制を整えます。
1個のパンの値段=160円が付加価値の合計であり、これを10,000個生産しました。
全部で160万円の生産を行なったことになります。
次に設備の生産面 (生産②)。
- 設備会社Aは40万円の農場向けの設備を生産します。
- 設備会社Bは40万円の小麦粉工場向けの設備を生産します。
- 設備会社Cは40万円のパン工場向けの設備を生産します。
- 設備会社Dは40万円の小売店向けの設備を生産します。
合計で160万円の生産を行なったことになります。
生産①と生産②の合計で、320万円の生産が行われました。
次に支出面。
- 消費者は、160円のパン x 10,000個全てを買いました(支出①)。
- 農場は、設備会社Aから40万円の農場向けの設備を(借金して)買いました(支出②)。
- 小麦粉工場は、設備会社Bから40万円の小麦粉工場向けの設備を(借金して)買いました(支出②)。
- パン工場は、設備会社Cから40万円のパン工場向けの設備を(借金して)買いました(支出②)。
- 小売店は、設備会社Dから40万円の小売店向けの設備を(借金して)買いました(支出②)。
支出①と支出②の合計で、320万円の支出が行われました。
最後に分配面。
各パンに関連する会社及び全設備会社は、商品販売で得られた付加価値の40万円を、以下のように分配しました。(簡易的に10万円ずつに分配してます。当然ながら金額はもっとバラつきます。)
- 従業員への給与支払いに10万円 (図中の雇用者所得)
- 会社にプールしておくお金として10万円 (図中の営業余剰)
- 設備の減価償却として10万円 (図中の固定資本消耗)
- 間接税(消費税、酒税等)の支払いとして10万円 (図中の間接税 – 補助金)
図中には、関係する企業が8社あるので、分配額の合計は、320万円となりました。
これで、生産面、支出面、分配面で等価となりました。
ただ、パンしか存在しない世界は当然ありえず、また、政府が公共投資を行う支出である「政府最終消費支出」や、「輸入ー輸出」(輸出から輸入を差し引いた支出) などが絡んできますので、支出面は以下のようにもう少し複雑です。

これに合わせてもう少し詳しく書くと、こうなります。

生産面。
- 外国から小麦を5,000輸入しますので、日本農場の生産は5,000となりました。
結果、日本農場の生産は輸入前の40万円から20万円に減ります (生産①)。
生産①と生産②の合計で、300万円の生産が行われました。
支出面。
- 日本国民は、パンを6,000買います (支出①-1)。
- 日本政府も、パンを1,000買います (支出①-2)。
- パンが売れ残り、在庫が1,000になりました (支出①-3)。
- 外国へパンを2,000輸出しますが、小麦を5,000輸入したので、差引が発生します (支出①-4)。
支出①と支出②の合計で、300万円の支出が行われました。
分配面。
- 外国から小麦を5,000輸入しましたので、農場が分配できる額が20万円に減りました (分配①)。
- 農場以外の7社の分配は変わりません (分配②)。
分配①と分配②の合計で、300万円の分配が行われました。
国民の所得を上げるためにはどうすれば良いのか?
「景気を良くする」ということは「GDPを上げる」ということです。
では、生産面、支出面、分配面のどれを増やせば良いでしょうか。
答えは「支出面」です。需要を増やすのです。
需要がなければ、生産量を増やしても在庫が増えていくだけで、所得へ分配するためのお金は増えません。
民間の需要である「民間最終消費支出」が旺盛になればよいのですが、バブルの後遺症で未だ企業は投資をしませんし、追い討ちをかけるように消費増税があって、一般の消費は消極的です。
じゃぁどうするか?
「政府最終消費支出」である「豪快な財政出動」で景気を刺激するのです。
そうすれば、分配面の「雇用者所得」が増えて、民間の需要が刺激され、その需要に応えるように企業の生産も増えていく流れができるのです。

支出面には、「輸出ー輸入」もあるじゃない。輸出を増やせばいいんじゃないの?
「輸出ー輸入」の金額は、GDP全体から見ると大したことないんです。
2021年の日本GDPは553兆円ですが、そのうち、輸出は約73兆円、輸入は約70兆円なので、差は3兆円程度です。GDPのうち、0.5%程度なんですね。
たったこれっぽっちの金額を増やすために政府や日銀は「円安に誘導して輸出を増やして景気を良くする」と言ってるわけですが、大した刺激にはなりません。
「政府最終消費支出」の2021年の国家予算は106.6兆円であったのに対し、2022年度は約107.6兆円となりました。微増です。
個人的には、もっと、2倍ぐらいに増やした方が良いと思うのですが。
ちなみに、2020年の「民間最終消費支出」281.4兆円でした。2001年も281.4兆円で、その間は280〜300兆円あたりをうろうろしながらも、たいして伸びていません。
とても参考になったのはこちら↓
ではまた。
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